動脈管開存 PDA


1. 動脈管とは

 大動脈と肺動脈とをつなぐ小さな管です。赤ちゃんがお母さんの体の中にいるときには必ず必要な構造です。胎児期には肺が働いていませんので、肺にはあまり血液を流す必要はありません。肺には流さないで全身に新鮮な血液を流すために動脈管があります。ただ、生まれた後は肺が働きはじめますので、動脈管はいらなくなります。ふつうは生後48時間以内に動脈管は縮んでほとんど血液が流れなくなります。そして、数週間もすると完全に閉じてしまいます。

2. 動脈管開存とは(図1)

 生後も動脈管が開いたまま残ってしまう状態を動脈管開存といいます。2000人に一人位の頻度でみられます。動脈管開存があると、内圧の高い大動脈から内圧の低い肺動脈へ血液が漏れます。全身に流れるはずの新鮮な血液が心臓へ逆戻りしてくるわけです。そのため心臓に負担がかかります。太い動脈管だと、子供のうちに症状が出てきます。さほど太くない場合は、気がつかずに大人になりますが、長期間にわたって心臓に負担がかかるので、息切れ、動悸を生じることがあります。ごく小さな動脈管の場合はこうした症状は感じませんが、心内膜炎(細菌が動脈管に付着して炎症をおこしている状態)の危険性があります。

3. 治療

 原則として治療が必要です。治療法は開胸手術とカテーテル治療の二通りがあります。手術では動脈管を糸で結んでしばってしまいます。カテーテルではコイルやアンプラッツアー閉鎖栓(図2)を入れてつめてしまいます。大人の患者さんでは、動脈管が石灰化(カルシウムの付着)のため硬くなったり、もろくなっていることが多く、単純に結ぼうとすると破れたりすることがあります。そのため人工心肺を使って心臓を止めて慎重に行うことが多いのです。カテーテル治療は心臓を止めずに行うことができます。お体への負担が少なく、治療時間は1時間程度、ご入院は3泊4日程度です。


図1.動脈管開存

図2.動脈管開存の治療